脊髄小脳変性症はどんな病気?
脊髄小脳変性症の診断はどのようにされるのでしょうか?
脊髄小脳変性症の治療法にはどのようなものがあるのでしょうか?
脊髄小脳変性症の療養はどうすればいいでしょうか?

脊髄小脳変性症の基礎知識と療養のポイント

 

県立尼崎病院神経内科 影山 恭史 他

 

.脊髄小脳変性症はどんな病気?

 

@ どのくらい患者さんがいるのでしょうか?

人口10万人あたり約5 ? 10人の患者さんがおられます。全国で約2万人、兵庫県では、一般特定疾患医療受給者証の手続きをされている方が、約400人います。
遺伝性は、約40%(優性遺伝が多い)で、臨床、病理、遺伝的に異なるいくつかの病型があります。

 

A 脊髄小脳変性症の分類は?

脊髄小脳変性症は、多数の病型に分類されていますが、孤発性(非遺伝性)、遺伝性のものに分けられます。

@ 孤発性(非遺伝性)

オリーブ橋小脳萎縮症(OPCA)

皮質性小脳萎縮症

 

A 遺伝性

SCA1(旧病名 遺伝性OPCA)

SCA2(旧病名 遺伝性OPCA)

SCA3(Machado-Joseph病)

SCA6(旧病名 Holmes病)

DRPLA(歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症)

フリードライヒ失調症

遺伝性痙性対麻痺

など

 

孤発性(非遺伝性)

中年以降に発病します。頭部のCTやMRIで、小脳や橋の萎縮を認めます。

日本では脊髄小脳変性症のなかで、最も多い病型です。

初発・初期症状として歩行時のふらつきや手の使いにくさなどの運動失調がおき

ます。経過とともに、パーキンソニズム、起立性低血圧、発汗障害、排尿障害

など自律神経の障害も伴います。このOPCAのほかに、病理学的に類似点が多

い線条体黒質変性症、シャイ・ドレーガー症候群をあわせて、多系統萎縮症と言

います。

 

・皮質性小脳萎縮症とは

中年以降に発病します。パーキンソニズムや自律神経症状が現れることは、

ほとんどありません。小脳症状のみを現わす型で、進行はゆっくりです。

 

遺  伝  性

頻度は少なく、発病年齢は20歳〜55歳と幅が広いです。眼振*が著しく、外眼筋麻痺、小脳症状が現れます。SCA3(Machado-Joseph病)と識別が困難です。

頻度は少なく、発病年齢は2歳〜65歳と幅が広いです。
症状としては、小脳失調と眼球を上下左右に速く動かすことができず、眼球がゆっくり動く緩徐眼球運動、腱反射の低下が見られます。
筋萎縮、自律神経症状は、あまりありません。

 

日本で最も頻度の高い家族性脊髄小脳変性症とされています。
発病年齢は若年〜中年、運動失調が主に現れ、びっくり眼、ジストニア*、筋萎縮などもあります。進行はゆっくりです。

 

小児から老年期まで幅広く、発病年齢によって症状が異なります。また、世代を経るに従って発病年齢が若くなる表現促進現象が認められます。病型は、1)若年型、2)早期成人型、3)遅発成人型に分けると、若年型では、てんかん、ミオクローヌス、痴呆、早期成人型では、痴呆、小脳失調、舞踏病アテトーゼ*、遅発成人型では、小脳失調、舞踏病アテトーゼがみられます。ハンチントン病との鑑別が必要です。

 

若年から中年にかけて発病し、関西圏では最も多いタイプです。眼振が認められ、歩行障害、構音障害など小脳失調を現わします。経過は慢性で、小脳症状のみのことが多いです。

 

日本では稀な疾患であり、遺伝子診断で確定した家系はないといわれています。
発病年齢は20歳以下の若年が多い。下肢の失調性歩行で発病し、感覚障害、筋萎縮、拡張型心筋症、脊柱側弯など骨格変形を伴うとされます。

 

若年に発病し、優性遺伝と劣性遺伝の場合があります。下肢の痙縮(突っ張り歩行)で発症し、視神経萎縮、痴呆などの合併することがあります。
診断には、多発性硬化症などが原因の痙性対麻痺を除外して行います。

 

B 脊髄小脳変性症には、どんな症状がありますか?

小脳障害:運動の調節、制御の障害

⇒運動失調をきたす

 

 

以下の症状も現れることがあります。

 

C 脊髄小脳変性症はどんな経過をたどるのですか?

急な中断などに伴い、動きにくさが悪化することがあります。

 

.脊髄小脳変性症の診断はどのようにされるのでしょうか?

 

 

 

.脊髄小脳変性症の治療法にはどのようなものがあるのでしょうか?

 

@ 運動失調を改善しうる薬(根本的に病気を治す薬ではなく、効果には個人差があります)

 

A抗パーキンソン薬 (パーキンソン症状のある人に対して使います。)

 

B自律神経障害(排尿障害、起立性低血圧)を改善しうる薬

 

 

.脊髄小脳変性症の療養はどうすればいいでしょうか?

 

社会生活、身体活動をできるだけこれまで通り継続し、心を豊かに保つことを心がけましょう。

 

歩行障害のケア:伝い歩き、介助歩き、杖、歩行器、押し車、車椅子、いざり、這って移動(家内)

 

出来るだけ歩く能力を維持し、その方の能力に応じて自助具を使い分けます。
リハビリについては、1日数回に分けて毎日行うことが必要です。ひとりで歩くことが可能な方の場合、膝を曲げるといったスクワットの後、腿上げを10回ほど行い、ゆっくり歩くことをすすめます。
椅子に座って立ち上がるという練習や座ったまま足踏みをするのもよいでしょう。

 

言語障害のケア:リハビリ、筆談、伝達器具

聞き手になる人の、根気強く聞こうとする態度が、何よりも話し手の話す意欲をもりたてます。できるだけ短く区切って、ゆっくり慎重に正しいアクセントを付けながら話します。自分が話している音を自分の耳で聴き、チェックするのも方法です。腹式呼吸で息を安定させることも大事です。
話しにくい場合は、筆談やトーキングエイド等意思を伝達する機器があります。
これらの機器を購入するにあたっては、一定の障害者手帳を持っている方は、日常生活用具の給付の対象となります。

 

嚥下障害のケア:食べ方や食物形態の工夫、重度の時は経管栄養

飲み込みやすい食品の形態や温度には個人差があるので、状態に応じて工夫が必要となります。素材は、舌でつぶせる程度の軟らかいもので、粘重度のあるものが良いでしょう。例)かぼちゃの煮物、プリンなど
食べ方については、急がずにゆっくりと食べます。一度にたくさん頬張らないで少しずつ食べ物を入れ、ゆっくりと咀嚼します。液体がむせる場合は、市販のとろみ剤などを使用してとろみをつけると、むせることが少なくなります。
嚥下障害があると、水分が不足しがちになります。これによって発熱、便秘、 尿路感染などを起こし全身状態も悪くなることがあります。お茶、ジュースなどに寒天を加え、ゼリー状にしておくと、水分を補給しやすくなります。

 

排尿障害のケア:服薬、自己導尿など

脊髄小脳変性症では、尿をためる畜尿機能と、尿を出す排尿機能の両方が障害されることがあります。色々とタイプがあるので泌尿器科の医師と相談して、自分に合う薬を見つけるようにしましょう。自己導尿は、運動失調があるので難しいかもしれませんが、状態が悪くなる前に早めに練習をしておく方がよいでしょう。

 

その他

入浴については、熱い湯、長湯、食後入浴は禁物です。

 


 

コミュニケーション機器(意思伝達装置)のいろいろ

 

  コミュニケーション機器の利用にあたっては、障害の程度や内容に応じて障害者自立支援法によるサービスの活用が可能です(下表参照)。なお、所得に応じて自己負担があります。また、自治体によって事業内容が異なる場合もありますので、具体的な内容につきましては必ず市町の障害福祉担当の窓口へご相談下さい。

 

種  目

給付を受けられる方の
障害程度

性  能 制 度
情報・通信支援用具 上肢機能障害もしくは視覚障害2級以上で文字を書くことが困難な者 障害者向けのパソコン周辺機器や、アプリケーションソフト等 〈地域生活支援事業〉
日常生活用具の給付 または貸与
携帯用会話補助装置

音声言語機能障害者または肢体不自由であって、発声・発語に著しい障害を有する者

携帯式で、言葉を音声または文章に変換する機能を有し、障害者が容易に使用し得るもの 〈地域生活支援事業〉
日常生活用具の給付 または貸与

重度障害者用
意思伝達装置

両上下肢の機能の全廃、及び言語機能を消失した者でコミュニケーション手段と認められる者 まばたき、筋電センサー等の特殊な入力装置を備え、障害者が容易に使えるもの 〈自立支援給付〉
補装具

 

*「意思伝達装置」は、身体障害者手帳に両上下肢の機能の全廃(上肢・下肢1級)、及び言語機能を消失した者(言語障害3級)ということが読み取れる文言の記載が必要です。

*意思伝達装置については、障害者自立支援法に該当しない場合、難病患者等居宅生活支援事業で給付される場合があります。市町の担当課へご相談ください。

 

〈参考〉

コミュニケーション機器には様々な種類があり、障害の程度やコミュニケーションの目的に合わせて選ぶことが可能です。下表はその一部ですが、指さし動作の可否を目安として分類しております。各機器のホームページから詳細な情報を得ることができますのでご参照下さい。また、下記「AT2ED」のホームページからも機器全般の情報を得て頂くことができます。

◇ AT2ED:エイティースクウェアード   http://at2ed.jp/

身体状況の目安

機器の名称(製造元)

機器の特徴 ホームページ
指さしができる トーキングエイドライト
(ナムコ)
・携帯用会話補助装置
・50音の文字盤のキーを押してメッセージを作り音声と液晶画面表示で相手に知らせます。電話やメールなどの通信機能に対応した「トーキングエイドIT」もあります
http://hustle-club.com/
at/n-at_hustle.html
ボイスキャリーペチャラ
(パシフィックサプライ)
・携帯用会話補助装置
・50音の文字盤のキーを押してメッセージを作り音声と液晶画面表示で相手に知らせます
http://www.p-supply.co.jp/
comaid/pechara/index.html
メッセージメイト
(ワーズプラス社)
・携帯用会話補助装置
・録音された複数の言葉を簡単な操作で再生することができます。1つもしくは2つスイッチを使用してスキャン操作が可能です
http://www.p-supply.co.jp/
comaid/voca/message/index.html
チャッティー!
(テクノサプライ)
・携帯用会話補助装置
・予め録音した8つの音声を対応するキーを押して手軽に発声させられます。本体パネルのキーの他に、外部につなげたスイッチでも操作できます
http://www.comil.jp/hiki.cgi?chatty
指さしが困難 レッツチャット
(ファンコム)
・携帯用会話補助装置
・障害にあわせた入力スイッチ(オプション)を使用して最大180文字までの文章を作成できます
http://www.funcom.co.jp/
ESCA 〈エスカ〉
(テクノスジャパン)
・重度障害者用意思伝達装置
・7種類の音声出力とナースコールやチャイムなど外部信号出力と連動できる機器です
http://www.technosj.co.jp/
communicate/esca.html
KOTOBAX 〈コトバックス〉
(テクノスジャパン)
・重度障害者用意思伝達装置
・日常に必要な会話196種類を音声出力するほか、簡単な文書作成も可能です
http://www.technosj.co.jp/
communicate/kotobax.html
伝の心
(日立製作所)
・重度障害者用意思伝達装置
・体の一部でセンサー(スイッチ)を動かすことで重度障害者が意思伝達を行う機器です。また、コンピューターを通じテレビなどの電源やチャンネル操作も可能です
http://www.hke.jp/products/
dennosin/denindex.htm
オペレートナビEX
(NEC)
・情報・通信支援用具
・1から5個の入力スイッチやテンキーで、ウインドウズのキーボード操作、マウス操作を行う代替入力支援ソフトです
http://121ware.com/software/
openavi/
MCTOS 〈マクトス〉
(テクノスジャパン)
・重度障害者用意思伝達装置
・生体信号によって問いかけへの応答をしたり、 各種の機器を操作するスイッチです。意識と意思がはっきりし、耳が聞こえ、言葉が理解できる方に利用していただけます
http://www.technosj.co.jp/
communicate/mctos.html
心語り
(日立製作所、エクセル・
オブ・メカトロニクス)
・重度障害者用意思伝達装置
・脳血流の増減を測定することで問いかけに対してYES/NOを判断します
http://www.excel-mechatronics.com/
medical.html